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「CA貯蔵の始まり」から現在まで |
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| (1) CA貯蔵の始まり −ガス貯蔵からCA貯蔵に− |
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CA貯蔵の研究は、1920年の後半から1930年の前半にかけて、イギリスにおいて最初の研究が始まったと伝えられております。第1次世界大戦(1914〜1918)による食糧不足が深刻だったイギリスは、高緯度で気温が低く日照不足の天候では晩生種のリンゴは完熟しないため、早生種と中生種のリンゴ(コックス・オレンジ・ピピンなど)が主に栽培されていました。これらのリンゴは貯蔵性に乏しく低温障害にもかかりやすいという弱点があるため、長期保存して食料の安定供給を可能にするにはどのような貯蔵方法が良いのかというのが研究のきっかけとなったのでした。 リンゴの貯蔵に冷蔵が効果的であることは知られていましたが、冷凍機の動力となる電力も不足している事から、炭酸ガスの発芽を抑える働きを応用した貯蔵法「ガス貯蔵」の確立をテーマに冷蔵庫を使用しなくても済む貯蔵法をめざし、ケンブリッジ大学の低温研究所のキッド博士と国立デイットン研究所(現在のイースト・モーリング試験場貯蔵部)のウエスト博士によって研究が行われました。それにより、鮮度保持とリンゴの呼吸作用との関係が明らかになり、「貯蔵効果を得るには低温貯蔵が最も優れている」「リンゴの呼吸量は冷やすことによりO℃で常温の10分の1に減少するが、ガス濃度の調整のみでは2分の1の減少効果しか得られない」ということが確かめられました。 ガス貯蔵だけで低温貯蔵に代わる方法が得られなかったことから、イギリスではその後の研究は進みませんでした。その後、アメリカで研究が引き継がれ、コーネル大学のスモック博士らの業績が認められ、「ガス貯蔵」は都市ガスなどのイメージを与えるので好ましくないという理由から「空気の組成を調整する」という意味の「CA貯蔵」Controlled Atmosphere Storageという呼び名を提唱して、アメリカ北部の各州に普及し、今日のCA貯蔵の基礎となったのです。 1940年、ニューヨーク州は「旭」のCA貯蔵に対し、「入庫期間は14日以内とする。酸素濃度は20日以内に5%以下にすること。貯蔵庫の閉鎖から90日以上経過しなければ解放できない。」というCA貯蔵に関する法律を制定し、適合施設にCA免許を与えました。免許は毎年更新し、規定に従って貯蔵されたリンゴには証書が発行され、厳正な管理の下で、遠距離輸送にも耐え得る貯蔵法として、本格的に商業べ−スに乗せて世界中に広がっていきました。 |
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| (2) 日本への導入と普及 −先駆者は小林啓造氏− |
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我が国には、1959年(昭和34年)に米国との学術交換によってリンゴのCA貯蔵(当時は「ガス冷」と呼ばれていました)が紹介され、翌年には弘前大学農学部の岡本辰夫教授、その翌年には北海道大学の堂腰教授と沢田教授らによってCA貯蔵の研究が行われるようになりました。民間では、りんご移出業者の小林啓造氏らによって「紅玉」の貯蔵試験が行われました。 記録にある最初のCA貯蔵は、1961年(昭和36年)10月、弘前市のりんご移出業者「小林久助商店」がCA冷蔵庫に400箱(約8トン)を貯蔵しました。小林啓造氏は久助の弟で、「レギュラー法」と言われる、もっぱらリンゴの呼吸のみによるブルダウンの方法を開発し自ら管理した人です。1962年(昭和37年には三芳商会(弘前市)が3,500箱(約70トン)のCA貯蔵を開始しました。 1964〜1965年(昭和39〜40年)にかけて、科学技術庁の「コールド・チェーン勧告」にもとづき、農林省(当時)の構造改善事業で助成を受けて、青森県、長野県、山形県、岩手県などリンゴ主産各県のJA経済連に40,000箱(800トン)クラスのCA冷蔵庫が建設されました。 しかし、当時最も多く生産されていた「国光」は、青森産は普通冷蔵でも4月以降の販売も可能であったことや、CA貯蔵も研究が始まったばかりでしたので、「果実障害の多発」「気密の保持」「CA装置の運転管理と故障の対応」など、問題点が多かった等、採算性の効果も認められないままこの施設は2〜3年後には普通冷蔵へ転用されたのでした。この時の果実障害発生の原因追及が弘前大学と青森県りんご試験場で行われ、CO2障害であることが判明しました。 また、民間では、普通冷蔵庫の中にビニール製のテントを張った「簡易CA」による貯蔵法がりんご移出業者の間で広がり、「紅玉」や「ゴールデンデリシャス」など貯蔵性が高くない中生種のリンゴに鮮度保持効果が認められ、消費地の市場でも注目されるようになりました。 昭和50年以降、品種更新によって「国光」に代わり、「スターキング」「陸奥」「ふじ」など甘味や高級感を求める品種が増え、これらのリンゴを長期にわたって鮮度を維持しながら供給できる高度な貯蔵技術が求められるようになったことから、CA貯蔵技術がまだ確立されていない中、大型CA冷蔵庫の建設が始まりました。そして1975年(昭和50年)には「青森県りんごCA貯蔵研究会」が発足し、青森県で初めてCA貯蔵を行った小林啓造氏が会長に就任しました。青森県りんご試験場、弘前大学農学部、CAシステムの施工業者などそれぞれの立場で試行錯誤を繰り返しながら各品種に合った貯蔵管理技術の確立へ向けて努力しその過程は研究会で報告されました。りんご移出業者や商系の共同施設が先行する形で普及した大型CA冷蔵庫の建設の流れは農協関係者にも注目され、1985年(昭和60年)頃から急速な普及を見ました。 |
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| (3) CAメーカーの変遷 −簡易CAから本格CAへ− |
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【簡易CA方式】 (株)山本製作所(山形県天童市)が開発し、後に、弘前ビニロン産業(株)――長内伸剛社長――も参入した「簡易CA方式」は、既存の冷蔵庫の中に蚊帳のように吊り下げたビニール製のテントを張り、その中にリンゴを入れてから入口を密閉し、ジェネレーターで低酸素空気を吹き込むものです。CO2はスクラバーに詰めた吸収剤(生石灰や苛性ソーダ)で除去して庫内のガス濃度を調整します。CA貯蔵の草創期に、りんご移出業者の間で一時使われましたが、ビニールの劣化による補修費が掛かりました。現在では殆ど使われておりません。 【スルーザー方式】 青森県での本格的なCA貯蔵システムの普及は、スイスに本社があるSulzer社(後にイソセル社と合併し現在はイタリアに本社があるIsolcell-Sulzer社)が開発し、コンバータ(酸素減少装置)とアドソーバ(炭酸ガス除去装置)を組み合わせた「再循環方式」による「スルーザー式CAシステム」が最初で、1972年(昭和47年)に青森市の佐藤正信商店に6,500箱(約130トン)が導入されました。このCA貯蔵システムを輸入したのは丸紅(株)で、設計と施工を朝日熱学工業(株)=現在は「(株)朝日熱学」に社名変更――が担当しました。1975年(昭和50年)には南津軽郡藤崎町(旧常盤村)の高木為貞商店が110,000箱(約2,200トン)を建設、翌年には青森県りんご共販協同組合が共同施設として160,000箱(3,200トン)の大規模CA貯蔵を設置しました。その後、平成の時代に入ると、N2発生機が普及し、コンバータは補助的な装置として使用されるようになりました。 【アーカジエン方式】 ダイキンエ業(株)と三井物産(株)の共同企画による、アメリカのTectrolGenerator (Whirlpool社)、Arcagen(AtlanticResearchCorp.)らのCA貯蔵システムです。コンバータとアドソーバを一体化したような装置で、プロパンを触媒で燃焼させて得た低酸素空気のCO2濃度を調整して庫内に送り込み、プルダウンを行うものです。このシステムはガス濃度の調整が繁雑で、運転コストも掛かるなどの欠点が多く、後発のCA貯蔵システムが普及したため撤退してしまいました。「エカトロン」も同様のシステムではないかと思いますが不明です。1964年(昭和39年)の弘前市内に建設された県経済連のCA貯蔵庫と、1967年(昭和42年)に弘前市高杉に弘前市農協高杉支店独狐倉庫(当時)に導入されたシステムはアメリカの技術であると伝えられています。 【窒素発生機を主としたCAシステム】 一部の業者が試験的に行ってきた「CA貯蔵リンゴ」が市場関係者にも認識されるようになり、新規のりんご冷蔵庫建設は「CA冷蔵庫」でなければならないと言うのが当たり前になり、(株)前川製作所、フジプラント(株)、大青工業(株)、木下工業(株)らが次々と参入してきました。基本的なシステムは先発のスルーザー方式とあまり違いはありませんが、「ふじ」の収穫量が増加するのに合せて、CO2の濃度を低く抑える事ができる「窒素発生機」によるプルダウンを主体にしたシステム設計が主流となっていきました。 又、CA室も従来は大部屋が多く建設されていましたが、リンゴの品種別に分けてガス濃度を設定出来るよう小部屋化が進み、今日のスタイルに至っています。各リンゴの品種に合ったガス濃度での管理の提唱と普及に努めたフジプラント鰍フシステムは、後発メーカーでありながら他社を引き離し、7割以上を占めるトップメーカーに成長しました。 |
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| (4) CA貯蔵技術の確立 −品種ごとの管理へ− |
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1990年(平成2年)頃を境に、プルダウンの方法に画期的変化が現れます。これまでの「コンバータ」による再循環方式、つまり庫内の空気を循環させてLPガスの燃焼により庫内O2濃度を下げるプルダウンから、「窒素発生機」を用いたフラッシング法が主流となりました。貯蔵性の弱い中生種のリンゴを対象に「如何にリンゴの呼吸を早く抑えるか」という方向で研究されてきたCA貯蔵は、「ふじ」の割合がCA貯蔵品の6割に達したことから、CO2によるガス障害が出やすい「ふじ」を安全に管理するためCO2を極力抑えることが最優先されるようになったのです。これまでのコンバータによる燃焼方式ではCO2の濃度が上がり過ぎてしまう難点があるため、窒素発生機によるプルダウンの有利性が評価されるようになりました。加えて「ふじ」の無袋化が進み、「サンふじ」のプルダウンは「蜜褐変」を防止するため急速なプルダウンは避ける――という管理方法が確立し、プルダウンを出来るだけ早く行う事をめざした設計から、入庫完了から10日以上ゆっくりしたペースで行うプルダウンで良い。また、品種ごとに合わせたガス濃度とするため、CA施設の1室は20,000箱ないし30,000箱程度に仕切るといった、それまで大型の室を建設していた流れに変化が表れています。これにより、窒素発生機の能力はそれほど大きくなくても間に合い、初期投資が思ったより楽であることから広く普及し、今日に至っております。 |
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| (5) メーカー別の収容能力の推移 |
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